
C言語入門|分業を支えるビルドシステムの仕組み
― なぜ「ビルド」を理解すると開発が楽になるのか
これまでの学習では、
C言語の文法やポインタ、構造体などを使って、
1人でもかなり本格的なプログラムを作れるようになってきました。
しかし、プログラムが大きくなり、
複数人で手分けして開発しようとした瞬間、
こんな疑問が出てきます。
- 別々に書いたソースコードは、どうやって1つにまとめるの?
- 変更したファイルだけを効率よく作り直すことはできないの?
- そもそも「コンパイル」って、裏側では何が起きているの?
これらの疑問に答えてくれるのが、
ビルドシステムです。

開発効率を高める3つの方法(おさらい)
まず、開発効率を高める方法を整理しておきましょう。
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 個人の知識と技能を上げる(これまでの学習) |
| 2 | 複数人で手分けする(この章で扱うテーマ) |
| 3 | 道具を使う(ビルドシステム・ツールの活用) |
この章では、
2と3を支える土台となる仕組みとして、
C言語のビルドシステムを学びます。
ビルドとは何か
C言語では、
ソースコードを書いただけではプログラムは実行できません。
ソースコードから、
コンピュータが直接実行できるファイル
(outファイルやexeファイル)を作る必要があります。
この一連の処理を ビルド と呼びます。
多くの人が、これをまとめて「コンパイル」と呼びがちですが、
実際にはもう少し細かい工程に分かれています。
C言語におけるビルドの全体像
C言語のビルドは、次の流れで行われています。
| 工程 | 役割 |
|---|---|
| プリプロセッサ | マクロ展開やヘッダファイルの読み込みを行う。 |
| コンパイラ | C言語を機械語に近い形へ変換する。 |
| リンカ | 複数の部品を結合して1つの実行ファイルを作る。 |
流れとしては、次のようになります。
ソースファイル(sample.c)
↓
(プリプロセッサ)
↓
前処理済みソース
↓
(コンパイラ)
↓
オブジェクトファイル(sample.o)+他のオブジェクトファイル+各種ライブラリファイル
↓
(リンカ)
↓
実行可能ファイル
ここで重要なのは、
狭い意味でのコンパイルは、この中の1工程にすぎない
という点です。
分業とビルドシステムの深い関係
ビルドシステムが分業に向いている理由は、とてもシンプルです。
- 各人が別々のソースファイルを担当できる。
- それぞれのファイルを独立してコンパイルできる。
- 最後にリンカがまとめて1つの実行ファイルにする。
この仕組みがあるおかげで、
| 分業開発でのメリット | 内容 |
|---|---|
| 同時作業が可能 | 複数人が同時に開発できる。 |
| 変更範囲が限定される | 修正したファイルだけを作り直せる。 |
| 作業効率が向上 | 全体を毎回作り直す必要がない。 |
という、大きな恩恵が得られます。
C言語処理系とは何か
C言語のビルドを行うためのソフトウェア群を
C言語処理系と呼びます。
代表的なものには、次の3つがあります。
| 処理系 | 特徴 |
|---|---|
| GCC | 多くの環境で使われている代表的な処理系 |
| Clang | 高速でエラーメッセージが分かりやすい。 |
| Microsoft Visual C++ | Windows環境で広く使われている。 |
これらはいずれも、
- プリプロセッサ
- コンパイラ
- リンカ
を内部に持ち、
C言語プログラムを実行可能な形へ変換します。
Visual Studio におけるビルドの流れ(補足)
Visual Studio をインストールすると、
統合開発環境を使わず、
コマンドラインからC言語をビルドすることも可能です。
Visual Studioを使ってコマンドラインからコンパイルを行う場合、あらかじめ用意された「開発者コマンドプロンプト」を使用すると PATH を通さなくてもコンパイルなどを実行することもできます。
Visual Studio には、
- コンパイラ(cl)
- リンカ
- 各種ライブラリ
が一式そろっており、
内部的には次のような流れでビルドが行われています。
| 工程 | 内容 |
|---|---|
| 前処理 | マクロ展開、ヘッダの展開 |
| コンパイル | C言語ソースをオブジェクトファイルに変換 |
| リンク | 複数のオブジェクトやライブラリを結合 |
統合開発環境では、
この一連の処理をボタン1つで実行していますが、
裏側ではC言語の標準的なビルド工程が忠実に行われている
という点は、GCCなどと同じです。
これから学ぶこと
この章では、
- プリプロセッサは何をしているのか
- オブジェクトファイルとは何か
- リンカがどのように部品を結合しているのか
を、
GCCを使った1工程ずつ確認する方法を紹介していきます。
ビルドの仕組みが理解できると、
- なぜ分業が可能なのか
- なぜ変更したファイルだけを作り直せるのか
- なぜビルド時間が短縮できるのか
が、自然と見えてくるようになります。
