【Python入門】7章のまとめ

 第7章では、Pythonにおけるオブジェクト指向プログラミングの基礎から、継承やメソッドのオーバーライドなどの発展的な概念までを一通り解説してきました。ここでは、その主な内容を振り返り、次に進むための要点をまとめます。

1.オブジェクト指向プログラミングの基本

1.1. 既存のオブジェクトの活用

 Pythonがあらかじめ用意している組み込みオブジェクト(数値、文字列、リスト、辞書、タプルなど)を有効に使うことは、開発効率を高める基本的なアプローチです。オブジェクトがもつメソッドや属性をしっかり把握しておくことで、短いコードで多くの機能を実現できます。

1.2. オブジェクトの生成

 新たにクラスのインスタンスを生成することで、プログラム内で扱いたい「モノ」を作り出せます。たとえば、MyClass() のようにクラス名を関数呼び出しの形で書くと、そのクラスのインスタンス(オブジェクト)が生成されます。

1.3. メソッドの呼び出し

 生成したオブジェクトのメソッドは、object.method() のような形式で呼び出します。メソッドに引数を与える場合は object.method(arg1, arg2, ...) の形となります。メソッドを通じてオブジェクトの状態を変更したり、何らかの処理を実行したりできます。

2.独自のクラスを定義する

2.1. データ属性からオブジェクトに値を保存する

 クラス定義の中で self.属性名 として宣言した変数を「データ属性」と呼びます。インスタンスごとに固有の値を持ちたい場合に利用します。例として、ユーザー名やスコア、在庫数など、インスタンスに応じて異なるデータを管理する用途で使われます。

2.2. init メソッドによるオブジェクトの初期化

 __init__ はコンストラクタのような役割を果たす特別なメソッドです。インスタンス生成時に呼び出され、データ属性の初期設定や、必要な処理(例:外部データの読み込み・初期化など)をまとめて実行します。

2.3. メソッドの定義

 クラス内で定義するメソッドは、そのオブジェクトが持つ「振る舞い」です。メソッドではデータ属性を参照・変更したり、外部からの入力を受け付けて何らかの演算を行ったりします。メソッドを上手く設計することで、クラスを使いやすく、保守性の高いものにすることが可能です。

2.4. 属性を外部から隠蔽する

 属性を直接外部からアクセスされないようにすることで、クラス内部の実装を自由に変更できるメリットがあります。Pythonでは慣例的に属性名の先頭にアンダースコア(___)を付けることで、「外部からの直接アクセスは控えるべき」という意図を伝えます。プロパティ(@property)を使うことで、外部からの読み書きを制御する手法もよく用いられます。

3.クラス属性を使ったクラスレベルのデータ管理

3.1. クラス属性を使ってクラスに値を保存する

 クラス属性とは、クラス変数とも呼ばれる、インスタンスではなくクラス自体に結び付けられた属性です。すべてのインスタンスで共通して利用したいデータがある場合に役立ちます。たとえば、動的に生成されるインスタンスの数をカウントするための変数などが代表的な例です。

4.継承とオーバーライド

4.1. 派生と継承

 既存のクラスをもとに新たなクラスを定義する仕組みを「継承」と呼びます。継承を使うことで、共通の機能をまとめた「親クラス(スーパークラス)」から機能を引き継ぎ、「子クラス(サブクラス)」に特化した機能だけを追加実装できます。

4.2. 既存のメソッドのオーバーライド

 継承したメソッドを、子クラス側で再定義することを「オーバーライド」といいます。スーパークラスで定義したメソッドをそのまま使うのではなく、必要に応じて子クラス用に振る舞いを変更したい場合に有効です。

4.3. クラスに新しいメソッドを追加する

 子クラスでは、スーパークラスにはない新しいメソッドを自由に定義できます。必要な機能を足しながら、既存のクラスを拡張して再利用できるのがオブジェクト指向の大きな強みです。

4.4. 複数のクラスからの多重継承

 Pythonでは、class SubClass(SuperClass1, SuperClass2): のように、複数のクラスを同時に継承することができます。多機能なクラスを開発しやすくなる一方で、クラス間の依存関係が複雑になりやすいため、注意して設計することが重要です。

以下に、7章で解説した主な内容を表形式でまとめます。

トピック概要
既存のオブジェクトの活用標準ライブラリや組み込み型のオブジェクトを活用し、効率的に開発を進める。
オブジェクトの生成クラス名() という形式でインスタンス(オブジェクト)を生成
メソッドの呼び出しobject.method() の形式でオブジェクトのメソッドを呼び出す。
独自のクラスの定義class クラス名: でクラスを定義し、インスタンス化したときの振る舞いや属性をカスタマイズ
データ属性からオブジェクトに値を保存する。self.属性名 でインスタンス固有のデータを保持
init メソッドによるオブジェクトの初期化インスタンス生成時に呼ばれ、属性の初期設定や初期処理をまとめて実行
メソッドの定義クラス内で関数を定義し、インスタンスごとの動作や計算処理を実装
属性を外部から隠蔽する。慣例的に _(アンダースコア) を使用したり、プロパティを活用することで実装を隠蔽
クラス属性を使ってクラスに値を保存する。クラス自体が共有するデータをクラス属性として保持
派生と継承既存のクラスをベースに新たなクラスを作ることで、コードの再利用性を高める。
既存のメソッドのオーバーライドスーパークラスで定義されたメソッドを、サブクラスで再定義し上書きする。
クラスに新しいメソッドを追加する。サブクラスで独自のメソッドを定義し、拡張機能を実装
複数のクラスからの多重継承class サブクラス(親クラス1, 親クラス2): のように複数のクラスを同時に継承できる。

まとめ

 第7章では、Pythonのオブジェクト指向プログラミングの理解に必須となる概念を体系的に学びました。クラスやオブジェクトを活用するときは、データ属性やメソッドの定義・呼び出し、そして継承の仕組みを正しく把握しておくことが重要です。特に、クラス間の依存関係が増えるとコードの可読性や保守性に影響します。適切に隠蔽や継承を設計し、複数人で開発する際のルールを定めることで、大規模なプロジェクトでも柔軟性と再利用性を高められます。

 次のコンテンツでは、ここまで学習してきたオブジェクト指向の知識を応用するための演習プログラムを用意しています。ぜひ手を動かしながら、理解を深めてください。