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【Python入門】何もしないpass文

何もしないpass文
Pythonのpass文は、「文法上は何か記述しなければならないが、現時点では何の処理も実行したくない」という場面で用いられる非常にシンプルな文です。pass文は、後で実装予定の関数やクラス、または一時的に処理をスキップするためのプレースホルダーとして使われ、プログラムの全体構造を先に組み立てる際に役立ちます。
ここでは、pass文の基本構文とその役割、そして実践例として、将来的に割引計算を実装する予定の関数のプレースホルダーとしてpass文を利用するプログラムを紹介します。

プログラムのダウンロード
「ダウンロード」から、JupyterLab で実行できるサンプルプログラムがダウンロードできます。ファイルは、ESET Endpoint Securityでウイルスチェックをしておりますが、ダウンロードとプログラムの実行は自己責任でお願いいたします。
1.pass文の基本概念
1.1. 基本構文と目的
pass文は、単に「何もしない」ことを示すために記述される文です。基本的な書式は以下の通りです。
pass
解説
- pass文は、実際には何の動作も行いませんが、構文的に文が必要な場所に記述することで、コードの整合性を保つために使われます。
- 例えば、関数やクラスの本体、またはif文やループのブロック内で、後で具体的な処理を追加するための仮置きとして利用されます。
1.2. pass文の用途と使用例
pass文は、以下のような状況で利用されます。
用途 | 説明 |
---|---|
空の関数やクラスの定義 | 将来的に実装するために、構文上記述が必要な場所に記述する。 |
制御構造内のプレースホルダー | 条件やループの中で、特定の条件下で何も処理を行わない場合に利用する。 |
開発途中のコードの一時的なスタブとして使用する。 | プログラムの骨組みを作る際に、まだ実装していない部分を示すために使う。 |
2.実践例:割引計算機能のプレースホルダーとしてのpass文
2.1. プログラムの概要
ここでは、ユーザから商品の価格を入力してもらい、将来的に割引計算を実装する予定の関数を呼び出すプログラムを例に、pass文の使い方を示します。現状では関数内の処理は未実装であり、pass文がその役割を果たしています。
2.2. サンプルプログラム
def calculate_discount(price, discount_rate):
"""
この関数は、商品の価格に対して割引率を適用し、
割引後の価格を計算する予定です。
ただし、現在は未実装のため、何も処理しません。
"""
pass # 将来的に割引計算の処理を実装するためのプレースホルダー
# ユーザから商品の価格を入力してもらう
price = float(input("Enter the product price: "))
# 割引率は10%とする
discount_rate = 0.1
# calculate_discount関数を呼び出すが、現状はpass文のため何も計算されない
calculate_discount(price, discount_rate)
# 関数呼び出し後に、機能が未実装である旨のメッセージを表示
print("Discount calculation functionality is under construction.")
実行結果
Enter the product price: 10000
Discount calculation functionality is under construction.
解説
- 関数定義
・def calculate_discount(price, discount_rate):
により、商品の価格と割引率を受け取る関数を定義しています。
・関数内のコメントで、この関数が将来的に実装される予定であることを示しています。
・pass
文は、現時点では何も処理を行わず、関数が正しく定義されるためのプレースホルダーとして機能します。 - ユーザ入力と型変換
・input("Enter the product price: ")
で、ユーザから商品の価格を文字列として取得し、float()
関数で実数に変換して変数price
に格納します。 - 関数呼び出し
・calculate_discount(price, discount_rate)
を呼び出すことで、将来的な割引計算機能の実装部分に処理を委ねますが、現時点ではpass文のため何も実行されません。 - 最終メッセージ
・print("Discount calculation functionality is under construction.")
により、ユーザに機能がまだ未実装であることが伝えられます。
まとめ
pass文は、Pythonにおいて実装が未定の部分に対するプレースホルダーとして利用され、構文上文が必要な場所に「何もしない」ことを明示的に記述するための簡潔な手段です。
- 基本構文: 単に
pass
と記述するだけで、何も処理せずにその場所を通過します。 - 用途: 空の関数、クラス、または条件分岐やループ内で何も実行したくない場合に用います。
- 実践例: 上記のサンプルプログラムでは、将来的に実装する予定の割引計算機能の関数内にpass文を置くことで、プログラム全体の構造を先に定義し、後で具体的な処理を追加できるようにしています。
これらの知識を活かして、開発途中のコードにおいて適切にpass文を利用し、コード全体の設計と保守性を向上させましょう。